普通って何

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友達は一人しかいない。 というより一人しか友達と思えない。 もう何年も連絡も取ってないけど たった一人だけ だと勝手に思ってる。 知り合いならいる。 でも友達?と聞かれたら、いやそうじゃないね。と即答出来てしまう。 街を歩いていても、決して前は見て歩かない。 少し斜め前を見て、人にぶつからないように歩く。 仕事をしてても同僚に必要以上の事は教えない。 出来れば連絡先も教えたくないから、それ専用の連絡先を作ってる。 そこに連絡が来たところで無視すれば良いだけの話になるから。 学生時代も必要以上のことは話したことはない。 聞かれたことに答えても良い範囲で答えるだけ。 都合の良い人間になってれば、好かれることはなくても嫌われることはないだろうし。 嫌われたとしても 別にそんなに話さないしな程度に思われていれば楽なもので。 その証拠というべきなのか。 地元にたまに嫌々ながら帰らないといけない用があって 結構な田舎だから、学生時代の同級生やらが結構残っているのだけれど 話しかけて来られても、名前と顔が一致しない。 あれこの人誰だっけ。 こっちの名前知ってるみたいだし ○年ぶりとか言ってるからたぶん中学の同級生なのかな とか その程度のもので。 その度に 何で覚えてるんだろって思う。 それを誰かに聞いてみても 仲良かったんじゃないの?とか 同じ部活だったんじゃないの?とか 色々言われるんだけど それさえも思い出せない。 自分の中で壁を作って それを越えさせたり壊されないようにしてて その壁はそう簡単に壊されるどころか 触れられることもなく 今のところ どんなものよりも頑丈に出来ている。 物心ついたときから 死にたがりのせいなのか いやたぶんそれもあるんだけれど 人を信用しても意味がないと勝手に思い込んでるから いつの間にか壁を作って 触れられないようにしていて それが悪いことだとも思わないし 不便だとも思わない。 壁を作ってると当人には見えないところが見えてくる。 空気みたいな存在でいるから まるでいることに気づいてないように さっきまで仲良さげに話してたくせに ある一人がどこかにいると その人の悪口を言い出す。 だいたいその言い出しっぺは人気者か 主に仕切ってるやつなのかはわからないけれど 周りは自分保護のためにその悪口に乗っかる。 戻ってくると何事もなかったかのように元の話題に戻ってる。 それが気持ち悪くて仕方ない。 別に自分はどう言われたってかまわないんだけど だって壁を自分から作ってるから ああでもどうして いなくなった後すぐに そうもベラベラと悪口が出てくるのか 周りが聞いていても どうせ何も言ってこないと思っているのかベラベラと 確かに何も言わないけどね。 だって興味がないから 良く思われようとも仲良くなりたいとも思わないし ただ気持ち悪い。 そう思い始めてからは 常に音楽プレーヤーを制服に忍ばせといて 休み時間はずっと音楽を聞いていたし 街を出歩くときも音楽を聞いてる。 人の声はとても耳障りだ。 アニメとかドラマとかまったく関係のない声はどうも思わないけど 街中で溢れかえる声は耳障りで仕方がない。 それでもわかるときはある。 本人に聞こえるか聞こえないかの音量で悪口を言っている時だ。 ああわざ言ってんだろうなって音楽を聴きながら 言われてる当人を見れば 下を向いて教科書を開いて あたかも聞こえてないフリを 悲しそうな顔か 平然を装った顔でしているから。 なんかわかってしまう。 ああ本当は聞こえてるんでしょ?って なんでそのときやめれば?って言わないのと聞かれたら 答えは簡単だ。 興味がないから。 言ってる連中も 言われてる本人のことも どうも思わない。 友達なんていらないと思っていて それより早く死にたいなとか平然と思っていたから 何も感じない。 心がないのかと言われたら どうなんだろ否定は出来ないのだけれど 漫画だアニメだドラマだで涙が出ることがあるから心は一応ある気はする。 いじめを黙ってみているのも 結局いじめをしているのと変わらないと言われても 自分のことで精一杯になってることに自分で気づいてなかったから そんなこと言われてもなとしか言い返せない。 自分はこうで、人に構ってる余裕なんてありません。 とでも言うべきなのか。 そもそも そんなことを言ってくるやつに限って 人には言うけど、自分で何かしてるかと言われれば、ほとんどがそうじゃない。 やめなよ。とたまに言うやつがいて 煙たがられて 言われてるやつに付き添うようにして あたかも友達ですよ。って身ぶりをして そのあと心が壊れていく。 そんなやつを何回見たことか。 子供の頃なんて心なんてあってないようなもんだ。 流されやすいし壊れやすい。 どうなんだろう。余りにもそんなことばかり周りで起きてて 自分自身は生きている意味も価値もわからなくて。 ああ本当にくだらない。 ああだこうだを繰り返して 月日は流れていって いざ同窓会ともなろうものなら地獄でしかない。 成人式とか特にそうだった。 小、中の同窓会の時。 こいつ誰だっけとか ああいたなそんなやつとか思いながら 行きたくもなかった同窓会に無理矢理連れ出されて 端の方に座っていたけど 結局記憶の中に顔だけ残っていた悪口を言われていたやつは 9割方来てなかった。 どうせそんなことも覚えてはいないんだろうなと思ってて 話しかけられても誰だか思い出せなくて ぼおっとしてたら気持ち悪くなって吐き気がして 早々にこっそり抜け出して高校の同窓会の時間まで車の中で寝ていた。 本当にアニメとかにあるようなモザイクだらけの顔が集まってるみたいで 顔を見てもわからない。 顔はなんとなくわかるけど名前がわからない。 ただ知らない連中の中に投げ出されたような感じがして やれ引っ込み思案だ コミュ障だ 人付き合いが悪いだ ノリが悪いだ 普通ならこうしてる 昔からこういうときはこうするものだ。 普通ってなんだよ 昔からってなんだよ ああだこうだご託並べて行かないのがなにが悪い。 多数派が正しいみたいな言い方をして 納得してるのはそっちの方だろ 当たり前って何。 正解って何。 その判断は 普通と多数派と昔からの伝統か? 押し付けにも程がある。
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