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三年前の雪の降る夜、
両親と弟が交通事故でこの世を去った。
その日は両親の結婚記念日で、
弟が社会人になって久しぶりに家族全員で外食をする予定だった。
しかしその日急な仕事が入り、自分だけ遅れて行くことになった。
仕事を終え、車でレストランに向かおうと携帯と鍵を手にした時、
知らない番号から着信が入った。
「はい、瀬名です。」
「瀬名弓弦さんの携帯ですか?佐野警察の者ですがーーーー」
鍵が手から落ちていたことに気がつかなかった。
突然の悲報。
今まで28年間一緒だった家族を、
一晩のたった一瞬で、みんな亡くした。
その日はただただ何時間も空から落ちてくる雪を眺めた。
そして、
流れる雲の合間から見え隠れする、美しく白い三日月を。
痛感した。
この世界に《神》などいないのだと。
ーーーーーーー彼女に出逢うまでは。
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