拗らせの始まり

1/2
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ

拗らせの始まり

蒼と出会ったのは小学3年の時。 誰のことが好き!とか、そんな事仲のいい友達と話し出すそんな歳。 仲良しの友達とクラスが離れてしょんぼりしてる時にやたらと話し掛けてくれたのが蒼だった。 何何?って他の子も話題に入ってきて、クラスにすぐに馴染めたのは蒼のおかげだ。 そんな気遣いの出来る蒼を好きになるのは必然で。 淡い初恋。蒼と話すのも遊ぶのも楽しくて嬉しくて仕方がなかった。 ほんとに大好きだったんだ。 でも、そんな2人の関係にこまっしゃくれた3年生のクラスメイトは黙ってはいない。 雅ちゃんは蒼くんが好きなの? 蒼くんも雅ちゃんが好きなんだって!! 凄い!両思いだね!! たちまちクラス全員がそんな話題で持ち切りになった。 ヒューヒューなんて冗談みたいな冷やかしをされたり、黒板に相合傘を書かれたり…。 今考えたら、別にどうって事ない、勝手にやってちょうだい的な事だけど、3年生の女の子にとっては恥ずかしくて堪らないことだった。 耐えきれなくてとうとう思ってもいない事を言ってしまった。 「別に蒼くんの事なんて好きじゃない!私には他に好きな子が居るもん!!」 一瞬にして空気が変わった。2人してからかわれてた事が今度は蒼一人が振られてやんのー!ってクラスの男どもが騒いで笑った。 蒼はうるせーなんて言いながら笑っていたけど、何だか寂しそうに見えた。 それから2人とも何となくぎこちなくなって、話さなくなった。 蒼は何だか怒っているようだったし、ほんとは大好き!なんて言えるわけもなくそのまま時は過ぎていく。 皆に2人の話題なんて忘れ去られても蒼と元の状態には戻れなかった。 そうこうしてるうちに隣のクラスの女の子が蒼の事が好きだと告白した。 その子は大好きを全面に表す子で、蒼も満更ではない様子だった為たちまち公認カップル誕生。 やるせない気持ちと後悔がない混ぜになって私の心はすっかりやさぐれてしまった。 別に!興味なんてないし!! 私だってほんとに他に好きな子作るんだから! 息巻いてみたもののそんな気持ちを切り替える術はなく、ズルズルと見つめるだけの小学生生活を送った。 相変わらず蒼とは微妙な関係のまま。 それから中学生になった頃にようやく私にも春が来た。 相変わらず不毛な片思いは続いていたけど、クラブの先輩がこんな私を好きだと言ってくれて付き合う事になった。 初カレ。これぞ青春。 でも残念な事に続かなかったんだなぁ…蒼のせいで。 今まで沈黙していた蒼が動き出したんだ。 突然私と先輩の前に現れて、 「先輩!雅の事返して下さい!俺のなんで!!」 結構な人混みの中で言われた。 「は?何言ってんの?雅、コイツ誰?」 先輩に言われても絶賛動揺中の私は完全にフリーズ。 まだ私の事好きだったんだ!!って嬉しさと、こういう時どうするのが正解?ってグルグル頭の中で考えてるうちに先輩に引き連れられてその場を後にしたらしい。 と言うかあまり記憶もなく、気づけば家の前まで先輩に送ってもらっていた。 え?私、蒼にまた酷いことしちゃった? 蒼どんな顔してたんだろう…。 色々パニックになってた時に唇に柔らかい感触。 え?と思った瞬間やってしまった。 パシーンって。綺麗な音がした。ような気がする。 先輩は怒りを隠そうともせず、叩かれた頬を触りながら睨みつけて別れる!と捨て台詞を吐いて帰って行った。 ファーストキスだったのに…。 ヘナヘナと座り込み、シクシクどころかワンワン泣いた。 家に居てた母親に何事かと出てこられるまで。若いって凄い。 翌日、どんな顔して蒼に会えばいいんだと悶々と登校したのはいいんだけど… 蒼の宣言は全校生徒に知り渡る事になっており、またまた冷やかし対象になってしまった。 そして馬鹿な意地っ張り女、すなわち私は小学生の時にあれ程後悔したと言うのに同じ事を繰り返す。 今度はもっと酷く。 「蒼なんか大嫌い!!」 何て天邪鬼な口。ほんとは大好きなくせに! そして今度は蒼が私の前を可愛い彼女を連れて歩くようになった…。 私の事自分のモノだって言ったくせに! 自分の事は大きく棚に上げて、蒼を恨む。 先輩を引っ叩いた事のせいなのか、蒼の大宣言のせいなのか、その後3年間私に春は来なかった…。 そして高校生。 以下同文…。 何回同じ事繰り返すんだ私。そして蒼。 とにかく高校生は酷かった。蒼は冗談みたいにいつも違う子を連れていた。 何故か毎度それに遭遇してしまう私。 ほんとアレはキツかった…。 どうにもこうにも拗らせまくった私達。 蒼は遠くの超のつくエリート大学に行った為、平穏無事に?私にも人並みの恋愛という物を経験した。 だから社会人になってまた同じ事が繰り返されるとは思っていなかった。 それなりに幸せで平和な4年間を過ごした後だから無性に腹が立った。 心の奥底へしまい込んだ蒼への想いを知らないふりしてやり過ごしてた為、ほんとに引き出せなくなっていた。 社会人になった蒼は、吹っ切れたのか前以上にストレートで、諦めない男にパワーアップして、私の前に突如現れた。 誰に聞いたのか職場から出てきたところで。 「雅!迎えに来たよ!!」 何て王子様よろしくな爽やかな笑顔で。 そんな感じでもう4年目になる。 私も蒼も今年で26歳。 いったいいつまで拗らせてんだ!!このままだとあっという間に三十路だよ…。 隣の脳天気なこの男。どうしてくれよう。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!