拗らせ女と拗らせ男

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拗らせ女と拗らせ男

初恋の思い出。 何となく甘酸っぱくて、こそばゆい。 何もかもが淡くて、澄んだ気持ちになる。 でも…私は…。 出来れば思い出したくない。 と言うかできれば頭から消し去りたい。 そしたら、少しはまともな恋愛が出来るんだと思う。 うん。きっとそう。 私、高野 雅は何だか感傷的になりながら、ふぅ…と長い息を吐いて職場のある27階建てのビルのエントランスを出た。 今から小学生からの親友の婚約祝いを同級生達と開く事になっている。 小学生なんてワードのせいでこんな何とも言えない気持ちになってるんだわ…。 しかも今日は奴と顔を合わせるし。何でアイツも来るのよ!! 今度はふんっと鼻息まで荒くなる。 いよいよ地団駄まで踏みそうになった時にポンっと肩を叩かれた。 その途端、「ゲッ」と心の声がホントにでた。心底嫌な顔まで付けて。 そんな私の嫌な顔ももろともせず、肩を叩いた本人はニコニコ顔だ。 憎たらしい!! 「よ!お疲れ!!」 軽く手を挙げて、私の反応はスルーして相変わらずのニコニコ顔のコイツ。 コイツこそが私の思い出したくもない初恋相手、広瀬 蒼だ。 「何の用よ。」 「何のって、一緒に行こうと思って。」 ニカッと笑って、触れ合いそうな程近づいてくる。 そうはさせないと私は即座に一歩下がる。 近づくな!!ギロっと睨んでやる。 でも、そんなのお構い無し。いつもそう。 いつもいつも、突然やって来て、私を惑わすんだ。 好意を隠そうともせず、どんなに邪険に扱っても、いつもニコニコ爽やかに笑って私にまとわりつく。 好意って、自惚れてる訳ではない。 ほんとに隠そうともしないのだ。 だって… 「大好きな雅と少しでも長く居たいからさ。」 ほら!またこんな事、人の会社のビルの前で言わないで欲しい。 たまにこんな事が起こるから、職場でも私はラブラブの彼氏付きと言う認識になっている。 違うってどんなに訂正しても、度々やってくれるから信憑性が無くなってしまった。 密かに憧れた社内恋愛の夢は崩れ落ちた。 合コンだって彼氏に悪いしって誘ってもらえない。 彼氏って!!こんなヤツが彼氏の訳がないだろう!! くそぅ!!ほんとに地団駄を踏んでしまった。 プッ。 蒼は口に拳をあてて、綺麗な顔をクシャッとして笑ってる。 不覚にも少しドキッとしてしまった。 そうなんだ。蒼は容姿だけは極上だったりする。カッコイイだけでは済ませれない、ほんとにシャープで綺麗な顔をしてる。 おまけに高身長ときた。 だから周りの女の子は黙ってないんだけど…。 どれだけ言い寄られても、華麗にスルーしてるのよね。 マジマジと顔を見ていたら、 「何?俺と付き合う気になった?」 ちょっと不敵に笑う蒼。 「なわけないでしょ!もう!行くよ!!」 あーあ、結局こうやって、蒼と一緒に行動する事になるんだよね。 諦めに似た感情で駅までの道を進んだ。
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