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「まゆ、ちょっと来て」
日常が戻り始めたある日、父親の遺品整理をしていた母親に呼ばれた。
「これ、みて。
パパの大事なものが入ってるみたい」
お菓子の箱を開けると、写真が何枚か出てきた。
わたしの小学校の運動会、音楽会、家族旅行したときのもの。
全部、ピンボケだったり、横をむいてたり、アルバムに残すようなものではない、失敗写真、
そして、一番最近のものは、高校一年のときの吹奏楽の定期演奏会のときのもの。
離れているから、小さく映ってるけど、わたしがトランペットをもっている。
「これ…」
「あ、ごめんね。
パパに言っちゃった。
まゆが来てほしくないって言ってたよって言ったんだけどね、目立たないようにコッソリ見るからって、一番端っこで、離れてみてたみたいよ」
そして、写真の下に入っていたものは、バースデーカード
わたしの3才の誕生日のときのもの。
左側には、ローソク3本たったケーキの前に座っているわたしの写真があり、
右側には、
「大切な大切な、宝物のまゆへ
お誕生日おめでとう。
かわいくて、やさしくて、強くて、賢い女性になりなさい。」
って書いてある。
「こんなの、知らなかったよ」
「ママも知らなかったよ。
写真撮ってたのは覚えてるけどね。
このドレス、お姫様みたいだってパパが買ってきたのよね」
「あ。思い出した。
このドレス、レースのところが首にあたって、くしゃくしゃして痛くて着心地悪かったから、写真とってすぐに脱いだんだった。」
「あー、ママも思い出した。
パパがせっかく買ってきたドレスだったのに、まゆ、写真とったときしか着なくって、脱いじゃったのよね
パパ、がっかりしてたの思い出したわ」
「ひどい娘だね」
「ふふふ、ほんと、ひどい娘だね。」
一番下から出てきたのは、茶色い封筒。
まゆのトランペット代って書いてあって、中から、15万円がでてきた。
「これ…」
「あー、パパ、こんなことしてたんだ。
最近ずっと忙しくて残業で飲みに行く暇がないって言ってたから、
お小遣いの中から、ためてたんだわ。」
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