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2_どう考えても命のが大事!
「浜松で降りてくれ。」
「実家に報告に行くのか?」
「ああ、ついでに昔一緒に行ってた地元の鰻屋に行こう。」
親友は少し考えてから転職の当たりがあるか聞いてきた。教育係をしてくれた先輩が会社を立ち上げていたのは知っていたので、聞いてみるつもりだと言った。
先輩の会社の作品を聞かれたのでいくつか挙げてみたら、親友は知っていて面白いと言っていた。俺もそう思う。少なくとも今よりやりがいは出るだろうし理不尽はなくなるはず。転職するにしてもせめてアニメに対して誠実に向き合っている会社でありたい。
「アニメ業界からは出なくていいのか?基本的には転職しても一般の会社より大変だろ?」
「…そういえばその発想はなかったな。でも俺はアニメ製作に幻滅したんじゃなくて会社に幻滅したんだから、アニメ業界にはいたい!!」
そういうと親友は「そうか」と言って微笑んだ。
「今電話して確認してみろ。駄目なら取りあえずは納品を目指した方がいいだろ?」
「いや、スタッドレス無しで雪道という命を懸ける事はすべきじゃないだろ!?」
自分が無理やり巻き込んだことを棚にあげて突っ込む。普通は親友が一方的に怒るはずなんだけど、昔から自分の事をおいておいて人のことを気にしすぎるところがあったが、健在のようだ。
そうは言っても連絡を早めにしておいた方が次の対応が取れるので個人携帯に連絡を入れる。先日仕事納めしたという連絡を貰っていたからで、若干の申し訳なさがある。
繋がると同時に「何があった?」が第一声だった。さすがは元同僚である。事情を説明して転職したい旨を伝えると。
「採用!!」
とあっさり転職がきま…ってちょっと待て。面接もしてないのにそんなんでいいのか?
「んじゃあ、電話面接だったって事で。お前とはアニメに対して夜通し語り合った事もあるから今更話してもしょうがねぇだろ。人手足りてないから、制作進行以外にもできる事はやってもらう可能性があるのは覚悟しておけ。」
他に今の状況の対応も色々と指示してくれた。今ほどこの人が教育担当で良かったと思った時はない。困ったらまた連絡しろと言われて電話は切った。
親友には今の電話で転職が決まったと伝えたらさすがに驚いていた。
東京からずっと運転して疲れたとの事なので次のサービスエリアに寄る事にした。寝起きから文句を言わずにぶっ通しの運転だったので当然である。
俺の奢りで遅めの朝食を取りながら話をしているとスタッドレスも大分古くなっているようなので型落ちを買う事にした。タイヤも奢ろうとすると親友は渋ったけれど安全の為にも俺がごり押しした。
スタッドレスを履いていないと聞いた時には驚いたけれど、結果的に転職をするキッカケになったので親友様々なので受け取って欲しい。
今度こそプライドを持った仕事がしていけると来年への期待が高まっていく。
社会人としてありえない仕事放棄なのだけれど、各所にやってきたことを言うと攻める人間はいなかった。
後で聞いた話だが、東北に行った新人はレンタカーで行ったようだが慣れてない雪道で事故して長期入院らしい…。もしかしたら、その状況は自分達も陥ったかもしれない状況だった。スタッドレスを履いていたら特攻してたので、履いてなかったのは何かのお告げだったのかもしれないと思った。
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