絶叫

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「あの……先輩にひとつ、お願いがあるんですけど……いいですか?」  それは高校の卒業式を間近に控えた、ある日の夕方だった。  ボクの前には、はにかみながら胸の前で白い指を組む、『彼女』が立っていたんだ。  ……思い返せば中学時代、ボクの学校生活に『モテる』なんて言葉はなかった。  口下手でフツメンの陰キャだし、勉強出来ないし、体育なんて『2』以外とったことがない。何しろ鉄棒の懸垂なんて1回だって無理なぐらいなんだから。  そう、ボクは『モテる要素ゼロ』人間だった。  少しだけ状況が変わったのは高校に入ってからだ。  ボクとツルんでた仲間の中に『無限のストライクゾーンを持つ男』と呼ばれるチャラ男が居たのだ。    このチャラ男、只者ではなかった。女となると相手の可愛い、そうでないの一切に関わりなく全て平等にナンパ攻勢を仕掛けるのである。  そして、『すぐ飽きる』。  だから、こいつの周囲には常に『捨てられた』だの『取られた』だのと言ったヘビーウェットな話が絶えなかった。  けどしかし、それでも常に女生徒が周囲を取り囲んでいたのは事実だから、自動的にそうした女生徒達はボクとも面識は出来ていた。まぁ……取り巻きの女生徒たちにとっては『個体識別が可能な程度』には、だろうけど。  ……その中の一人が『彼女』だった。  決して大柄ではないボクよりも少しだけ背が高く、フワっと仕上げたショートボブの髪が唯でさえ小さな肩をよりキュートに演出している。  そして何より、学年No1……いや、学校No1と言っていい整った顔立ち。『華がある』とは、ああいう人間を指すのか……と思う。    彼女は同級生の女友達と一緒に、チャラ男の輪に入っていた。  だが、チャラ男にご執心なのはその同級生の方らしく、常に食い気味になってチャラ男の馬鹿話をケラケラと笑い転げていた記憶だ。  肝心の彼女は、というと。  あまり、そのチャラ男にはご興味が無いようで、少し距離を置いて遠巻きにニコニコと笑っている姿をよく見かけたものだ。
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