白い相棒

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白い相棒

 今、自分はきっと夢の中に居る。しかしながら、もう少しで目覚ましが鳴ることがどこかで分かる。  ピピッ  ワンコールで止めた目覚ましは不服かもしれない。すまないな。今日は、いや、少しの間は君の出番がワンコールかもしれない。  寒い。ブルッと身震いしながら、こたつの電源をオンに。ストーブ、君も起きてくれ。  そわそわとヤカンでお湯を沸かしながら、期待の時間まであと少し。  チロリ~♪チロリ~♪チロリロリ~♪  来た!あっち!すすっていたお茶を少し指にかけたことなんて些末なこと。さあ、いでよ!  待望の炊飯器を開けると、ピカッとつやっと一面の白米。これを寝てる間も待ち望んでいたのだ。正に白銀の……いや、今そんなことはいい。  ちょっと奮発して買ったブランド米を、せっせとお茶碗へよそう。そしてこたつへ一直線。テーブルに準備した海苔、卵、醤油。君たちの出番はまだ早い。 「いただきます!」  最初の一口は何もいらない。白米だけ味わう。なんてこった白米。君の実力を分かっていたようで分かっていなかった。口からはふっと溢れた湯気まで美味しい。これこれ、そのあとは海苔と醤油……いや海苔だけでもいいかな。海苔だけ、海苔と醤油、そして卵……。 「ん!」  美味しさを噛み締めてたつもりがやってしまった。茶碗一杯そのまま食べてしまった。まだ楽しみたいおかずがあるのに……!早々に飛ばしてしまうとは!だがしかし、それも見越して小さく盛った自分にサムズアップを示したい。そうだ、まだあるのだ。  二杯目は海苔と醤油、そして卵をあえて外して三杯目はお茶漬けにして掻き込んだ。夜足りるか、なんて心配は夜の自分にまかせた。 「ごちそうさまでした!やっぱり、白米うめー……」      幸福感。ああ、食べることはこんなにも幸せだ。  ぐぅ。  ……ぐぅ?お腹が鳴った?今食べたのに?あれ、そういえばお腹一杯じゃないな。あれ?お腹すいた  ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピ  ビックリして反射的に伸ばした手が、目覚ましにクリーンヒットする。未だ布団の中で、ストーブもついてないし、テーブルにも何もない。  「夢……?はっ!ご飯は!?白米は!?」  飛び出して炊飯器を見るが稼働してない。開けてみれば、むなしくも空だ。  そしてゴミ袋にブランド米の空 袋。段々と目が冴えてきた。  「米、昨日で終わりだったんただった……買おうと思って忘れてたじゃねーかちくしょう!」  海苔と醤油の口になっていたので、結局買っておいた切り餅を醤油にからめて、海苔で巻いて醤油餅完成。うまい……白米食べたかったけど。  カーテンをあければ、外は銀色。どおりで寒いと思った。これが全部白米ならいいのに。 「今日はカレーライスにしようかな」  なんでもない冬の日。湯気さえ美味しい白い誘惑。毎日の食べることは、楽しみと幸福に満ちている。
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