Act1、緋色の邂逅

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 乾燥地帯にある町トパズへ彼女は到着する。広大なオアシスを中心とし栄えているそこは、独特の色合いを持つ民族衣装を纏う浅黒い肌の人々が多く町人と窺えた。  市場を進む彼女はその中で浮いた存在と言えた。スラリとした長身に色白の肌と烈火のような赤を持つ短めに切り揃えられた髪、ゴーグルをつけた紅玉の如き瞳は煌めきながら映る景色を楽しみ笑みとして表れる。  やや赤みがかった白のジャケットを羽織る下にはタイトなセパレートタイプの黒いインナーを着用し、動きやすさの為かホットパンツを履き脚を守る為か赤い金属製のグリーヴを靴代わりとしていた。 「良い町だな〜、って、早いトコ修理屋見つけないと……」  インナーと同じ素材の薄手の手袋をつける手で握り押すのは機能停止寸前のレイア。きょろきょろと辺りを見回しつつ、すれ違う人とぶつからないようにレイアの位置を意識しながら通りを進んで行く。 ーーー  レイアを押しながら市場を進む彼女は途中迷いつつ、道行く人に場所を訊ねたりして目的地の場所をようやく知る事ができた。  目指すのはレイアの整備場……この世界では辺境地でも小さな整備工場、もしくは廃棄されたレイアのパーツのジャンク品を扱う場所が必ず存在しているからだ。  しかしやっと目的地の場所を知れたものの、レイアの駆動音が小さくなり始め、浮遊するのもやっとと言う程に限界が訪れ始めてしまう。一旦歩くのを止めて状態を確認しようとするとぼんっという鈍い音と共に白い煙がレイア全体から昇り、そのまま地上に落ちて完全に機能を止めてしまう。 「うっそでしょ……あーもう根性ないんだから!」  一瞬の落胆から快活かつ素直な一声、周囲の目が集まってる事を知ってか知らずか止まってしまった愛機を強く蹴り、しかしすぐにそんな事をしても直るわけが無いと冷静になると崩れるようにしゃがみこみ、膝においた両腕に顔を埋めて再び気を落とす。  と、そんな彼女の下へ近づく足音が耳に入り、やや潤んだ目と沈んだ表情で振り返る。何かが入ってると思われる大きなカバンと、持ち手を両手で握る小さな手……ゆっくり見上げると少し背の低い、ライトブルーの長い髪をリボンで結いた縁無しメガネをかけた少女がぎこちない微笑みを向けていた。町人達とは明らかに異なる雪のように白い肌と、青い目が第一印象として強く残る。 「あ、あの……よろしければ、わたしが診ましょうか?」  数秒の沈黙の後、少女に小刻みに頷いて応えると少女がレイアに近づくのに合わせて横へずれて作業に目を向ける。  診ると買って出てくれたものの、淑やかな印象を与える少女がレイアを直せるとは想像できない。しかし、持っていたカバンを開くと中には大小多様な工具類が整理整頓されて備えられており、また、少女の服装も雰囲気には似つかわしくない使い込まれた作業着なのに気づく。
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