2.窓のない部屋

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2.窓のない部屋

「納得してもらえたかな、お嬢さん」  そう言って、髭面の男は朱里の顔を覗き込んだ。面構えに似合わず、優しく問いかけて来た。それが一層不気味に感じられた。不気味なのはこの男だけではない。その不快感が何処から来るのか、一刻も早くこの不快感から逃れたくて顔を上げて周囲を見渡した。 「この部屋には窓がない」  朱里はこころの中で小さく呟いた。 「お前さんの言う通りさ、ここには出口がない。だから、お前さん一人でここから逃げ出すのは不可能だ」  出口がないからここに連れてこられた。そしてここにも出口がない。朱里は答えを見いだせない自分に憔悴しきっていた。 「弟さんを助けたいのだろ、じゃあ、オレ達の言うとおりにするしか道はないだろ。そろそろ腹を決めたらどうなのだ」 今度は凄みを利かして朱里の顔を睨んだ。 「まあまあ、そう焦るなって、まだ事情が呑み込めてないだけだ。時期に分かるって、オレ達がいい奴だってことをさ」  もう一人の初老の男がなだめるように言葉を挟んだ。  まるで刑事ドラマだね、これは。攻め役と落とし役の組合せってとこか。そう考えると不思議と心に余裕が生まれた。
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