4.レストラン東方見聞録

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4.レストラン東方見聞録

 厨房内は手が主役だが、客席は口が主役。それでもレストラン東方見聞録の客席では、手と同様に口を動かすことも忘れない。 「オーナー、いくらなんでもボッタクリじゃないですか。合成肉の味しかしないじゃないですか」  朝倉一馬(あさくらかずま)は先輩ウエイターの新浜敏(にいはまとし)に責付いた。 「は、はーん。お前、さてはつまみ食いしたな」 「す、すいません」 「じゃあ、これ飲んでみな」 「うま〜い、何、これ」 「料理の味は料理人が決めるんじゃなくて、料理を口にする客の味覚細胞が決める。これは味覚刺激剤だ。脳に直接作用して味覚を伝える。料理はなんだっていい。習慣性を高めるため、隠し味に覚醒剤も使ってある」 「残念だね。今の会話は録音した。直ぐに警察が来る。詐欺罪で逮捕だ」 「なるほどね、君が潜入捜査官ってわけか」 「高級料理店の看板上げているのだから、高級食材使えばいいじゃないか」 「おめえ、天然モノって食ったことあるか・・・」 「オレは金ねえからな・・・」 「世界的人口爆発で食材不足だ。今や金があってもこの国では手に入らねえ、でも、皆うまいものを食いたがる。需要があるから供給する。これは単なるビジネスだよ。カズ、正義感も持ち出すのもいいが、正義感じゃ飯は食えないぜ。知っているのだぜ、お前、多額の借金背負っているのだって、な」 「なんで、トシがそんなこと知っているのだ」 「それで、姉ちゃんがヤバイ仕事で稼いでいるらしいじゃないかい」 「こいつ、オレはお前らを許せねえ、お前もまとめてぶち込んでやる」
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