side-T

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「あれ? 颯真、こないだも爪切ってなかったっけ?」  パチンパチンという音に気付いて首を傾げたら、うん、と生返事をした颯真が真剣な顔で爪切りを続ける。 「ちょっと伸びてたからね」 「ふぅん?」 「傷つけたくないからさ」 「?」  ぱちん、と左の小指の爪を切り終えた颯真がことりと爪切りを置いて、左手をオレの頬に添えてきた。 「司のこと、大事にしたいからね」 「ぁ……」  にこりと笑う顔が優しいのに、なんだかこちらの興奮を誘ってきてゾワゾワザワザワする。 「ちょっと待ってね。右手が残ってるから」  ちゅ、と唇が優しく唇に触れて離れていった。  ソワソワして落ち着かないオレと、真剣な顔でもう一度爪切りを持ち上げた颯真と。 「~~っ、あのっ……そのっ……オレ?」 「ん?」 「じゅん、び……? して、くる……?」  ぱちん、と親指の爪を切った颯真が真ん丸の目でオレを見つめて。  ふふっと笑った。 「ごめん、そんなつもりじゃなかったのに……司がそんな可愛いこと言うから、その気になっちゃった」 「っ」  あうあうと目を白黒させるオレの頭の後ろに回した手を、颯真が引いた。  至近距離で真っ直ぐ射貫いてきた目がふわりと笑う。 「準備、してきてくれるの?」 「…………ん」 「じゃあ、待ってるね」 「……ん」 「顔真っ赤だよ」 「……だって……」  勘違いだったことが恥ずかしいのに、それをアッサリ受け入れてもらえたことが嬉しいのだ。 「……ホント、可愛いんだから」 「ん、ッ」  触れてきた唇は、さっきと違ってねっとり絡み付くような深い深いキスをしかけてくる。ついていくのがやっとのキスが唐突に終わったら、フワフワしたまま立ち上がってほわほわと浴室へ。  腰の辺りにギラギラする視線を感じてクラクラした。
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