11人が本棚に入れています
本棚に追加
予言
ガラスのような瞳が、透明人間、ナズナをまっすぐ見つめていた。
瞳の主である森の魔女は、言った。
「哀れなる透明人間。
お前はすべてを捧げ、やがて幸福へとたどり着くだろう。
だが、覚えておけ。
その幸福の先にあるのは、大いなる絶望だ」
結局ナズナは、森の魔女の予言を、最後まで完全に理解することはできなかった。
そして、残念なことに、理解できていたとしても、結果が変わることはなかっただろう。
ただ、後になってナズナは思うのだ。
怒り、悲しみ、諦め。そして、少しだけの郷愁。
魔女の、ガラスのような、透明な瞳の奥底に、静かに渦巻いていたそれら感情。
それこそが、絶望ではなかっただろうかと。
最初のコメントを投稿しよう!