ふみちゃんと僕4 『お正月にはプロポーズ？！』

お正月には初詣

　今日は一月四日。着付けの本を床に置き手順を確認しながら、実家から送ってもらった赤い着物を着る。最後に花柄の黒い帯を結び、時間はかかったものの、なんとか自分で着られた。
　看護師にはもともと曜日による定休日はないけれど、お盆や年末年始の休みは既婚者が優先的に取るのは暗黙の了解だ。独り者の私は三が日は仕事で、今日からがお正月休みなのだ。けれど料理人の彼もお正月は仕事だったから丁度いい。

　姿見の前で振り返って背中越しに鏡を見る。

　「うーん、おかしくはないと思うけど、もしおかしくても自分ではわからないかもな……」

　なんて、ネガティブに呟いてみたけれど、口元は正直だ。嬉しくてつい緩んでしまう。なぜなら今日は彼と初詣に行く約束なのだ。そして彼が作っておいてくれたお正月料理でランチ。彼が作る料理は、洋食も和食も絶品だ。

　仕事中に栄養バランスが取れた病院食を安く食べられるのはありがたいけれど、お正月と考えるとやはり味気ない。世間とはズレているけれど、今日が私のお正月だ。
　「お雑煮くらい作ろうか？」と聞いたけれど、「お正月には僕の料理を食べて欲しいんだ」と言ってくれた。
　なんて優しいんだろう。