ふみちゃんと僕4 『お正月にはプロポーズ？！』

『新年にはサムシング ニューを』

　ふみちゃんはうなずいて、ドクターアンリにもちょっとお辞儀してから、バッグに手を入れた。そしてスマートフォンを自分の顔の前に掲げた。

　（これは顔認証だ！）

　ふみちゃんの家で感じた違和感の正体はこれだったのだ。顔認証とはスマートフォンのロックが、顔を映すことで解除される仕組みのことだ。

　「ふみちゃん、顔認証にしたの？　前は指でなぞるパターン認証だったよね？」

　声が震えるのを抑えて聞く。ふみちゃんがいない時に、こっそりスマートフォンのメッセージアプリや写真の画像などをチェックしていたことがバレてしまったのだろうか？

　「パターン認証はセキュリティが甘いので、僕が顔認証の設定に変えてあげたんですよ」

　ドクターアンリが会話に入ってきた。

　「ああ、そうなんですか。それはどうも」
　（余計な事をするなぁぁぁぁぁ！）

　返事と同時に心の声が胸の中を暴れまわる。

　もうこれからはふみちゃんのスマートフォンはチェックできない……。もちもち梅もちの餡に入っている梅の塊が、やけに酸っぱかった……。