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「ふみ!」
命の恩人の僕の横をドクターアンリが走って追い越していった。あわてて追いかけようとしたが、法被姿の集団に行く手を阻まれた。やけに元気な初老の男性たちが、僕の肩をしっかりと抱いて取り囲み、背中を叩き握手を求めてきた……。
「アリガトウアリガトウ」「君ノオカゲデ、大惨事ヲ マヌガレタヨ!」「枝ガ少ナクナッテキタカラ、後カラ拾ッテキテ、足シタ枝ダッタンダヨ~」「詳シイネ、キミィ!」などなど。
ふみちゃんのところに一刻も早く駆けつけたい僕にとっては、賞賛も妨害呪文の詠唱でしかない。
彼らの頬が赤らんでいるところを見ると、すでにアルコールを飲んで出来上がっているようだ。僕の気のない生返事を遠慮だと思い込み、「オクユカシイ、青年ダ!」と言う。さらに機嫌がよくなった彼らは、ふみちゃんとドクターアンリと僕の三人を、ひとつのグループだと断定し、行列の前の方に一緒に押し込んだ。
好意という名の物理攻撃だ。
どうやら神様はふみちゃんに良く思われたいというよこしまな欲望を見逃してはくれなかったらしい……。
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