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話していく内に朱姫が帰宅した時の話になり、未咲の名前が上がった。
未咲の存在はいつも朱姫から聞いていた為、玄関先での光景にも少し納得した知生。
朱姫自身も未咲の話になるとどこか楽しそうで、知生は「いい友達だな」と返した。
「さ、出来たな。食べるか」
「はい」
「「頂きます」」
食事をしながらも話は続き、話の流れで朱姫は例の蜘蛛の事を話した。
巨大になった事は伏せつつ。
「今日は本当に蜘蛛に驚かされてばかりでした…」
「分からなくもないが、本当に気を付けろよ?しかし、学校にも同じ蜘蛛がな~…」
「あ、同じかどうかは分かりません…。だけど、本当に吃驚するので急に現れるのは…」
「ふっ、蜘蛛に言っても仕方無いだろうけどな」
「はい…」
「そういや、朱姫が蜘蛛苦手になった理由って確か…」
「知ってるんですか?」
「前に兄さんから聞いたんだよな…。何だっけ、え~っと…、ああ!そうだそうだ、朱姫がようやく歩けるようになった頃、庭を散歩してたら大きな蜘蛛の巣があってそれに引っ掛かったとかなんとか」
「蜘蛛の巣に、引っ掛かった…?」
「ああ。それだけなら良かったんだが、驚いて暴れた時に巣の主が服の中に入り込んでて、着替えた時にポロッと出てきたんだと」
「服の中に…、蜘蛛…」
「それを見て大泣きしたらしいから、それからなんじゃないか?」
「………」
全く記憶には無かった朱姫だったが、小さい頃とはいえ、服の中に蜘蛛が入り込んだ事があると知りショックを受けていた。
朱姫が箸を止めた事に気付いた知生は、「悪い悪い」と言って手を伸ばしそっと頭を撫でた。
知生に頭を撫でられ、顔を真っ赤にした朱姫は俯き、「大丈夫です…」と返した。
そうしている内に夕食を終え、後片付けをした後、知生に促され朱姫はお風呂に入ることに。
一人湯船に浸かりながら、先程、知生に頭を撫でられた事を思い出して朱姫は再び顔を真っ赤にした。
そして、触れられた部分へそっと手を伸ばし、知生の手の感触を思い出そうと目を瞑った。
瞬間、手に何かが付いた気がして目を開き、そっと手を目の前へと移動させた。
朱姫の目に映ったもの。
それは、朝枕の上に、そして学校の手摺にいたのと同じ大きさと色の蜘蛛だった。
「………………え?イヤッ!!」
蜘蛛が自らの手に乗っていることを理解するのに少し時間が掛かったが、理解すると同時に勢い良くそれを振り払った。
一度床に落ちた蜘蛛は引っくり返っていたが、直ぐに体勢を整えると朱姫の方へ頭を向けた。
すると、どこからともなく学校の階段で聞いた時と同じ声が聞こえて来て、朱姫は身体をビクつかせて辺りを見回した。
「…すまんな、驚かせて…」
「え?誰…」
「お前の目の前にいる」
「…え…、う、そ…」
「嘘じゃない」
「………」
「お前が「予告もなく現れるな」、と言っただろ?今晩、お前の部屋を訪ねる。それじゃあな…」
言うなり向きを変えた蜘蛛は、壁をつたい姿を眩ました。
茫然と見ていた朱姫は、蜘蛛が姿を消すと顔を真っ青にし、慌ててバスタオル一枚で浴室を出て知生の元へ走った。
「っ…、知生、さん…」
トンッ
「ん?おっ、どうした朱姫そんな格好で…。また、蜘蛛でも出たか?」
「はい…」
「よし。今、退治してやるから待ってろよ」
朱姫の格好に少し驚きながらも、理由を聞き、安心させる為に風呂場へ向かおうとした知生。
しかし朱姫は、知生の腕を掴み首を横に振った。
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