宮宰コンラートによる回想

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 一週間後、ユリウスは地下牢から脱獄した。 「手筈通り、ユリウスは脱獄いたしました」  私がそう報告すると、王子はここ数年で初めて見せるような、解放感に満ちた表情を浮かべた。 「良かろう。言えなかった言葉は、精神の迷宮から連れ出して、具体的な姿形を持たせてやらねばな」 「よろしいのですか? ユリウスはきっと、殿下を恨んでいることでしょう」  私の懸念に、王子は少しだけ恥ずかしそうな顔をして答えた。 「それはない。私の真意を、きっとあいつも分かっているだろう。なにせ、私の友なのだから」  ユリウスが魔王を討ち果たし、聖女を連れて王国に帰還したのは、その二年後のことだった。
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