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◆二〇三五年・一月十一日
私の名前が刻まれている墓標に赤いオダマキを添える。あの理論でいけば、こうやって一日ずつ過去にずらして行けば、私を殺した全ての世界に回れるはずだ。もう何度巡ったか分からない。ただタイムマシンに赤いオダマキが残り続けている以上、この懺悔の旅は終わらない。
意味もないのに殺した私よ。百十八人の私よ。本当にごめんなさい。
この旅が終わったらどうするかなんてまだ考えられていない。考えようとする度に、何千万人の死傷者という呪いが私の心を押しつぶす。失われた物は絶対に二度と戻ってこない。そんな残酷な世界でどうすればいいかなんて、まだ、考えられない。私一人の命では、この罪の天秤には釣り合わないのだから、死んだところで精算もできるわけがないだろう。
そんな弱く最低な私だけれども、とにかくこの旅だけは完遂しよう。”あやまち”の懺悔を完遂させたら、絶対、私の”過ち”について向き合うから。
墓標を前に、自身の罪悪に潰されそうになる心を震わせるように抱きしめる。
そうして次の墓標へ花を添えるために、私は踵を返して立ち去った。
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