番外編

4/7
2576人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
 この不相応な部屋で暮らすにあたって、家族にもそう言い訳をしたのだったと今になって思い出した。俺の給料じゃあ背伸びしたって暮らせないいいマンションだもんな。 「付き合ってる人は、いる。一緒に、住んでるよ」 「まぁ、そうなの? 何も言ってくれないから知らなかったわよ」 「お兄ちゃんに、彼女・・・・・・。物好きがいたのね。もしかして、脅して付き合ってもらったんじゃないでしょうね!」 「加奈子、お兄ちゃんに失礼でしょ。そんなことないわよねぇ?」 「ないわよねぇ、って。あるわけないだろ」  その言い方は、母さんも半信半疑って感じじゃないか。確かに強面で、人付き合いだって得意じゃないけど。 「今日、彼女さんはいないの?」 「仕事で出てる。その、彼女っていうか・・・・・・」  相手が男であるっていういい機会だと切り出そうとした時、ガチャッとリビングの扉が開いた。 「たっちゃん! 聞いて! 撮影トラブルで今日一日オフになった―! たっちゃんと、一日ラブラブできるよー!」  元気よくはしゃいだ声が、部屋中に響いた。なんてタイミング。入ってきたのはもちろん湊人で、ソファに座る二人を見てきょとんとしているし、母と加奈子はこっちはこっちで、唖然と口をあけている。それはそうだ。いろんな情報が一気に流れ込んできたんだから。 「あれ、どちらさま?」 「お、おかえり湊人、その、うちの母と妹の加奈子」
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!