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「寂しい。寂しい」
そう言う湊人を慰めたのは俺だ。仕事なんだから、と。一週間なんてあっという間だと。
「毎日連絡する。電話は無理でもライン送る。それで俺、頑張るから」
「ああ。俺も頑張る。頑張れ、湊人」
最後にギュウッと力強く抱きついて、笑顔を見せて湊人は荷物を抱えいってしまった。湊人がいってしまったマンションは、とても静かで寂しい。寂しくてどうにかなってしまうのは、もしかしたら俺の方かもしれないと本気で思った。
「ただいま」
そう言って会社から帰ってきて、ああそうか、と切なくなる。
誰もいない部屋に帰るのはよくあることだ。湊人は忙しく俺が起きている間に帰ってこないこともあるし、俺より早く起きて出ていくことだってある。それでも、湊人が帰ってきた形跡はある。それを感じて、俺は湊人の存在を確認し安心していた。
それもない今が、すごく寂しく感じる。
離れて暮らしていた頃はそんなこと感じなかったのに。湊人と暮らし始めて二ヶ月。いつのまにか、湊人の存在がこんなにも大きくなっていたのか。
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