俺とあいつのこと

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 そんな自分が嫌になることも数多く、改善しようと試みるが断念すること多々。最近はもう諦めの境地にたっている。 「桐ケ(きりがや)、今日飲みいかね?」 「え、あ、ごめん。今日はーー」 「なんだ、先約か?」 「あー、うん。そんなところ。ごめん。また誘って」  せっかくの貴重な誘い、断るのは忍びないのだが。今日は絶対にはずせない。定時で上がってまっすぐに家に帰らないといけないミッションがあるのだ。  俺には、唯一ともいっていいほどの友達で同期でもある中堂にも言えない秘密がある。  これは決して漏らしてはいけない最重要機密事項だ。  俺は中堂の誘いを断り、ミッション通りに仕事を終わらせ電車に乗り込み最寄り駅で降りると、足早に家に向かう。  超高層マンション。一会社員には到底手の出せない高級マンションに足を踏み入れると、エントランスを抜け、エレベーターでまっすぐ部屋のある階に向かう。  部屋の扉の前にたち、鍵を開け中に入ると、パタパタと奥の方から足音が向かってくる。それこそが、俺の秘密だ。 「たっちゃん! おかえりぃ~!」  両手を広げて飛び付いてくるこのイケメンーー、そう昼間女子社員が黄色い悲鳴をあげていた張本人、桐谷湊人本人だ。
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