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「たっちゃん。おかえり。お疲れさま」
「湊人、ただいま」
体に巻き付いたまますりすりと頬擦りをする湊人の頭をポンポンと優しく頭を撫でてやりながらモゾモゾと靴を脱ぐ。そして、湊人の頬にチュッとキスを落とした。
俺の最大の秘密。
それは、桐谷湊人と恋人同士ということだ。
「ご飯にする? お風呂にする? それともーー」
「湊人にしてもいいのか」
「へへっ。やってみたかったー。これ」
キャピキャピとはしゃぐ湊人を腰に巻き付けながらリビングに向かう。キッチンではもう夕食の準備が整っていた。玄関まで美味しい匂いが漂っていたのは、やはりこれだったのか。休みもほとんどなく忙しく働いている湊人の、今日は貴重な休みだった。その休みを、夕食作りに費やすなんて。
「料理、大変だっただろ。別に俺、帰って作ったのに」
「いいんだって。こういう時じゃないと俺作れないし。たまには俺だって、手料理振る舞いたいんだよ」
「ありがとな。嬉しいよ。あったかいうちに食べないとな」
「ん。じゃあ、先ご飯にしよう。実は本当にお風呂もできてるんだ」
俺から自然と鞄を受け取っていつもの位置に置いてくれる。そのまま俺のジャケットを取りに戻ってくる。その動きが自然で、なんだか無償に幸せを感じる。
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