其の二 福利厚生部、始動

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「失礼するよ。」 高尾山薬皇院の一角。 陰態であるこの世界の薬皇院は、人間の世界の薬王院の数倍の規模である。 何しろ、ここは飯綱大権現がお住まいになり、それに遣える大天狗や烏天狗たちが日々修行をしたり、陽態である人間界に赴いて捧げられた願いに尽力したりしているのだ。 株式会社化したことで、そんな天狗たちの日常も変化せざるを得なかった。 大天狗八人衆がそう決めたのだし、何より飯綱大権現が承認したのだ。 だからといって、すぐに各部署に分かれて仕事が始まったわけではない。 八人衆の間で話し合われた内容を他の大天狗たちへ下ろし、さらに烏天狗たちに説明する。 誰がどの部署に所属するかを決め、そこでの仕事を割り振り、慣れるところまでもっていき、ようやくの始動だ。 華煌があの場でお山の株式会社化を提案して半年。 本日、彼は初めてすべての部署への顔出しを行う予定だった。
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