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「で?この3人を試食に使ってもいいと?そういうことで合っているのだろうか。」
「何だと?」
興奮気味の峻妙の言葉に、大将が華煌を睨む。
「どういうこった、旦那よ。」
「いやいや、試食に使うってことじゃないって。お客さんだよ、れっきとした。」
客と言われても、大将たちはその意味をよく飲み込めない。
「ここは天狗が天狗のために経営している店なんだよ。けれど、天狗同士ではどうもマンネリ化してしまうし、烏天狗は遠慮して意見を言わない、大天狗はあまりここには通ってこない。」
「そうなんだよ。華煌の温泉には通うくせに、茶店にはあまり寄らないんだ。おかしいだろう、それは。」
次々と新商品の企画イメージが湧いてくるらしい峻妙にとって、それはどうにも頭の痛いことらしかった。
考えてみれば、それも当然のこと。
口にすれば美味いとわかる、乾いた喉が潤えば快を感じる。
だが、そもそも天狗たちは激しい飢えを感じることはないのだ。
また、金銭でのやりとりもなく、注文すれば出てくる茶店の品々へのありがたみは薄い。
これでは、店側も高いモチベーションを維持することは難しい。
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