其の三 サル山事情

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「でね。このままじゃあ茶店の存続にも関わりかねない。せっかく峻妙様がアイディアを出してくれても、お客が天狗だけではねえ。あまりにつまらない。」 華煌は自分もその天狗の一員だというのに、物言いに遠慮がない。 「ちょうど、俺はこちらにもサル園を作る予定だった。呼び名は別にしよう。大将たちに失礼だからね。施設が整ったら、それとともに陽態から何人か呼ぶ。もちろん、猿たち全員を呼ぶ気はない。眠っている間だけ限定で。あ、でも、女性も来てほしいかな。そういう細やかない配慮もあった方が商品開発には必要じゃないですかね、峻妙様。」 女性と言ってはいるが、ようするにメス猿である。 華煌から「女性」と聞いて、峻妙はううむと呻った。 「そうだなあ。ただ、女性となるとなあ。僕はあまり気にしないんだが、他の八人衆がなあ。あと、大権現様がなんとおっしゃるか。」 「女子供がこっちの世界に来ると、何か不都合でもあるってのかい。」 大将に尋ねられて、華煌は「全然そんなことはないよ」とけろりとして言った。 「たとえば、修験道からくる霊山の女人禁制だとか、仏道からくる女人禁制だとか、そんなものがあるけれど。」 「だめってことじゃねえかよ!」 思わず番長が怒鳴り、隣にいた参謀に抑えられた。 華煌だけならともかく、この場には大天狗八人衆の一人峻妙もいるのだ。
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