其の三 サル山事情

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吉津太郎をやり込めて黙らせると、華煌は他の6人に向けてさらに説明を重ねた。 「温泉でも問題になりましたが、大天狗と烏天狗の確執の要因の一つとして、飯綱大権現様の元、2種類の天狗しかいないという現状も起因してはおりませんか。本来、我らは飯綱大権現様の前では存在意義を一つにするもの。大天狗ばかりが偉いなどということはありませんでしょう。」 「ちょっと待ちなさい、華煌。」 まだ話し終えていない華煌の話を、人事部の智多勝が遮った。 「おまえの言い分も分からぬでもない。だが、大天狗と烏天狗では神通力の質も量も違う。そこに、おのずと差は出てくるのではあるまいか。」 「そうだぞ、華煌!だいたい、メス猿まで呼ぶとはけしからん!人型にするということは、女人ではないか!」 吉津太郎の師である慧讃羅も、吠えるように反論してきた。 ただ、2人の言い分は中身が異なっている。 静かにひたりと冷ややかに言葉にする智多勝と熱血のまま騒ぐ慧讃羅。 そのどちらも、華煌を怯ませることはなかった。
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