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そのどちらも、華煌を怯ませることはなかった。
「お二人のご意見、どちらもありがたくお受けいたします。」
そうした上で、まずは智多勝の意見に答える。
「もちろん、差はありましょう、智多勝様。何故なら我らはそういう生き物ですから。そこに妙な優越感や劣等感は不要だと申し上げているだけです。八人衆の皆様方にはそのような浅い考えなどございますまい。私などよりずっと長く生き修行も重ねていらっしゃる。ですが、他の天狗たちはそのように理解しておりません。一たび出来た大天狗と烏天狗の間の壁は、容易には崩せません。そこに別の種として猿の存在を持ち込むことは、緩衝材の役割も担っております。むろん、懸念すべき点はあります。猿が烏天狗たちの鬱憤を晴らすはけ口になることは避けるよう工夫いたしましょう。ここ、飯綱大権現様の御前で、我らは皆お山の一部という点では一つの存在なのですから。」
「おまえ、飯綱大権現様の御名を出せばすべて通用すると思っているのではあるまいね。それは不敬にあたるよ?」
「不敬などと。私は飯綱大権現様を心より敬い申し上げておりますのに。」
しれっとした華煌の言葉に、御簾の向こう側から静かな笑い声が漏れた。
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