其の三 サル山事情

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「サル園なるものは、現在どのようになっている?」 「まだ小さな岩山しかありませんね。なので、整備計画は立ててあります。」 これがそうですと、華煌は懐から書き付けを取り出して計俊坊に差し出した。 このお山の施設管理、必要物品の調達には財務経理部を通す必要がある。  華煌は計俊坊対策もしっかり考えてきていたのだ。 「『お休み処サル園(仮称)』?」 書き付けを凝視しながら、計俊坊の眉間にみるみるうちに皺が寄る。 「サル園だろう。何故わざわざ建物を。」 「人型を取ってもらいますから。陽態でもサル園があり、彼らを逃がさぬよう囲う塀もあります。さすがにこちらで彼らを閉じ込めることはいたしませんが、まさかにこの薬皇院への出入りまでも赦されますまい。」 当たり前だろう!とまたしても吉津太郎が怒鳴る。 華煌はそれを無視した。 「陽態とこちらを行き来するにしても、行動を制限するにしても、拠点があった方が分かりやすいですし、そこが居やすい場所であれば彼らからもそうそう文句も出ますまい。もちろん、我ら天狗も利用可能にいたしますよ。資源は有効活用しなければ。」 「お休み処と言うからには、そこにうちの茶店の2号店を出して薬草茶と団子を!」 目を輝かせて意気込む峻妙に、八人衆の中の数人は口元をかすかに引き攣らせた。 華煌の突飛な提案も困りものだが、それに次いで新しいことをすぐ始めようとする峻妙もまた他の大天狗たちには要注意な存在なのだ。
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