其の三 サル山事情

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「大将たちの方が、きっと柔軟にここに慣れ適応するだろう。薬皇院の中に招き入れることはできないけれど、それ以外は大概の場所に行ける。息抜きだと思えばいいのさ。人の目を気にせず、のんびり過ごして行けばいい。人間でいう、ええと、何だったかな、そう、別荘。別荘のつもりで。それに俺たち天狗が慣れていけばいい。これからは、少しずつ新しい風をお山に入れていかなくてはいけないってことに、早く皆が気づいてくれたらいいんだがなあ。」 「そんなもんかねえ。」 何か違うような気がするんだがと、大将は腕組みをしながら悩むも、華煌はけろりとしている。 ただ、少しの動揺もないその姿に、不安感は微塵も感じられない。 『こりゃあ、あっちで他の奴らにも話をしないとな。一応安全とわかるまで、女どもは連れてこれねえなあ。』 結局は華煌の考え通りにするしかなく、大将は群れの仲間を連れてくること前提で思案し始めた。 そんな大将の様子をちらりと見、華煌はいっそう満足げに微笑む。 その華煌が本当は何を考え、この陰態・高尾山に株式会社化を持ち込み、今回は陽態の猿まで巻き込んだのか、大将も他の大天狗たちもまだ知るよしもなかった。
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