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華煌は、自分の福利厚生部が管理する施設なので、名称公募から部署ごと降りた。
華煌以外の天狗たちは参加してもいいのではとの周囲の声に、「ああ、それでしたら薬湯温泉もそのうち施設の名称を考えますので、それはうちの部署でやります」とさらりと答えた。
かくして、「お休み処 霞」はかなり大々的にオープンしたのだった。
華煌が提出した予算申請書に、財務経理部の計俊坊は苦い顔をしたが、申請書や図面に不備がなく、しかも名称コンテストに飯綱大権現が乗り出したということもあって、資材調達や建設にかなり尽力する羽目になった。
お休み処はいくつかの区画に区切られ、一番広いのは共用スペースである大広間だった。
他に、天狗専用スペースと猿専用スペースがある。
だが、そのどちらもかなり狭い。
「それはそうだろう。元来、このお山より生まれいずれはお山に戻るものとして、猿も天狗もさほどの違いはない。であれば、共用で使うことが大前提でいいだろうし、天狗専用の部屋を作っただけでも温情というものだ。」
そう華煌が言い放ち、それでいいのだろうかと吉津太郎は悩むも、師匠筋の慧讃羅が「共にお山に尽くすもまた修行!」などと言い出すので、「そ、そうですね!慧讃羅様!」などとあっさり認めてしまった。
「おまえ、ちょろいぞ。」
そんな吉津太郎を、華煌はからからと笑った。
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