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そんな猿たちに、阿南子は一瞥をくれるとすっと視線を華煌に戻した。
むしろ、阿南子の童の外見に参謀と番長の方が驚いて、頭を下げながらもちらちらと見ずにはいられないようだった。
「よい名称をいただきまして、ありがとうございます。霞とは、陽態の『霞台』から取りましたか。」
華煌が言うと、阿南子は頷いた。
「そのようだ。あそこは陽態のサル園や野草園などに近い。」
「ぴったりです。そこまで考えていただきまして、感謝の極みです。」
「やめろ、おまえから過剰に礼を言われると後が怖い。」
褒め言葉しか出てこない華煌の口を、阿南子がぴしゃりと黙らせた。
さすが八人衆の中でも最古参の一人である。
言葉を絶たれても、けろりとしている華煌も華煌なのだが。
「そこの者ども。」
阿南子は、華煌の背後でかしこまっている大将たちに声をかけた。
参謀と番長が体を強張らせる中、大将が「はい。」と返事をし、華煌の隣へ歩み出た。
「ここは華煌が我が儘を通して作ったものだが、遠慮なく要望を申せよ。近いうちに他のお山から来客がある。その際にはここも案内しようと思っている。それまでに不備があれば直させておくように。」
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