其の四 管狐(くだぎつね)騒動

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外からの評価。 それはつまり、高尾山以外のお山に住まう天狗たちや彼らが仕える神仏によるものである。 吉津太郎の顔色が変わった。 「こうしてはおれん!もし俺たちの働きに悪しき評価が下ったら、それはとりもなおさず大権現様の恥となるではないか。」 「大袈裟だな、吉津太郎よ。」 自分からそれを匂わせておきながら、華煌はのほほんとしたものだった。 「新しき試みなのだ。高評価でなくてもかまうまいよ。我ら天狗が大権現様の元で修行に励んできた歴史は幾百年、千年をも超える。こたびの株式会社化など、まだ1年と経っていないではないか。不備があって当然。むしろ、どのような点が改善されたらよいのか、教えていただくよい機会だと思えば。」 「おまえは肝が太いのか怖いもの知らずなのか・・・いや、両方だな。」 「なんの。俺とて怖いものはある。」 「む。」 会話の流れが思わぬ方向に向いたので、吉津太郎は目を輝かせた。
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