其の四 管狐(くだぎつね)騒動

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ほとんどの部署はそれぞれの執務室を見せれば済む。 問題は、企画部と福利厚生部だった。 阿南子だけでなく他の大天狗たちからの視線を受け、華煌は意に介さないようないつもの微笑みを浮かべ、峻妙は明らかにはりきった。 「そこは任せてほしい!企画会議の白熱した議論の様子と試作品のお試しを体験してもらうから!」 「落ち着け、峻妙。議論はともかく試作品を客人にお出しするな。完成品だけにしておけ。」 阿南子が冷静に制止し、他の大天狗たちもそうだそうだと頷く。 峻妙は、あきらかに残念そうに溜め息を落とした。 「新しい意見を聞けるかもしれないいい機会なのになあ。まあいい、これからは華煌のところに持ち込めるから。」 「お休み処の使い方を間違えないでいただけませんか。確かに天狗以外のものをこちらに呼びますけれどね。はっきり言ってしまえば猿たちを。しかし、彼らを試作のための実験動物のように扱うことは承諾しかねます。」 企画部試作の茶の感想を大将が伝えて以来、峻妙は天狗以外の意見が聞けると峻妙は猿たちの存在を重宝している。 その意図に、華煌ははっきりと釘を刺した。 「華煌。猿をこちら側に招くことは大権現様がお認めになられているのだから、峻妙がそれらを利用しぞんざいな扱いをせぬよう調査室の法羅光坊に目を光らせてもらう。それとは別に、おまえのところの施設を案内することになるので、そのことについて打ち合わせをしたい。」 阿南子に言われ、華煌は「仰せのままに」と頭を下げた。
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