其の四 管狐(くだぎつね)騒動

17/75
前へ
/384ページ
次へ
細かい日程については後日知らせるとの阿南子の言葉で、会合はお開きになった。 大天狗たちが退室する中、阿南子と華煌の二人は動かずに残っていた。 「私としては心配しかないのだが。」 しばらく無言の時間が流れた後、阿南子が溜め息と共に吐き出した。 華煌が愉快そうに首を傾げる。 「それは、戸隠からのお客人の来訪がですか。それとも、私のことがでしょうか。」 「両方だ。どちらかと言えば、おまえだな。」 阿南子に睨まれても、華煌は表情を改めない。 「滞在中の世話役は私がするし、各部署の案内も同様。だが、おまえにも共に動いてもらわねばならん。こたびの株式会社化などという珍事は、おまえの持ち込み企画だ。分かりやすいよう、そしてこの新しい組織がいかに成功を収めているかを説明しろ。」 「阿南子様の仰せとあらば。しかし、どの部署も優秀な皆様が部長を担当しておられる。私如きが説明申し上げずとも皆様にお任せすればよいのでは?」 「おまえから目を離す方が怖い。それに、一番見せるべきものがあるのはおまえの福利厚生部ではないか。」 阿南子の言葉に、華煌の笑みが深くなった。
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4902人が本棚に入れています
本棚に追加