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「お客人に薬湯温泉を使っていただけばよろしいのでは?風呂上がりに、峻妙様がわりと強引にタイアップを申し込んできて意外とご好評いただいている冷茶と団子をお出しするというのはいかがでしょう。それで少しは峻妙様もご満足なのではと。」
「峻妙の満足などどうでもいいのだが・・・そうだな。それであれが少し控えてくれるのであれば。」
他のお山の天狗たちを連れて企画部を訪れたところで、あれこれと新商品を説明し続ける峻妙を想像したのか、阿南子は華煌の提案に頷いてくれた。
「ついでに峻妙様には温泉の方にいていただいてはどうでしょう。企画部の説明は副部長である大天狗にも出来ること。私も福利厚生部の部屋は他のものに任せようと思っています。」
「おまえはどうするつもりだ。」
「もちろん、薬湯温泉とお休み処、それから薬草園をご案内いたしますよ。私の部署は、皆の健康や快適な職場に関わること。部屋の中にいたのでは不十分。現場を見ていただかないと。」
「・・・おまえ、自分の思惑通りに進めようとしているのではあるまいな。」
阿南子は眉を顰めたが、にこにこと笑みを浮かべる華煌の表情からは何も読み取れない。
素直な申し出とも策略ありとも分からないのだ。
結局阿南子は、条件付きで華煌の案を採用した。
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