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話はついたとばかりに立ち上がりかけた阿南子だが、一つ話忘れていたと座り直した。
「お休み処だが、当日は猿をよこさぬよう。」
「はて、ありのままを見ていただくのでは?」
「獣をお山に連れ込んでいるのかと言われかねん。獣と侮ってひと悶着あっても面倒だ。そのようなことがあっては、あの猿たちもこちらに来づらくなろう。」
阿南子なりの、大将たちへの配慮なのだろう。
華煌は、心得ましたと頭を下げた。
彼とて、せっかく陽態からこちらの世界に招き入れることに成功した大将たちが、面倒事に巻き込まれるのは避けたい。
しかし、華煌としては全面的に納得しているわけでもなかった。
「ということで、他のお山の天狗が来ている間だけ、こちらに来るのを遠慮してもらいたいんだよ、今回は。」
陽態が夜になるのを見計らって大将と参謀と番長を呼び寄せた華煌は、わざとらしいほど大きなため息をつきながら三人に頼んだ。
「遠慮するも何も、今のところは旦那が呼ばなきゃ俺らは来ないじゃねえか。」
しかも、今回はって言いやがったなと、大将が苦笑した。
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