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理念は、このお休み処の建設を飯綱大権現と八人衆に提案したときに華煌自身の口から放たれた言葉そのもの。
飯綱大権現様のおわすこのお山に生を受けることを赦されたものに、身分の差だの種の差だのはなく云々。
天狗と猿がすべからく平等に利用でき、特に共用の広間ではよき交流をとも書かれている。
大権現様のご威光の前ではすべてが平らであり、などというくだりまで華煌が読み上げると、番長がつまらなそうに口を尖らせた。
「なんでい。結局、大権現様がどんだけ偉いか書いてあるもんじゃねえか。」
「何ということを!」
血相を変えた参謀を、華煌はまあまあと宥めた。
「当たらずとも遠からず。大権現様を持ち上げておけば、他の天狗たちがここの存在意義を疑ったり、君たちに狼藉を働くこともないだろうからね。上司は有効活用しないと。」
「こいつより旦那の方が随分と不遜じゃねえか。」
呆れ気味の大将に、華煌はにやりと笑った。
「大権現様は懐がお広い。この程度のことはお許しくださるさ。さあ、こちらだ。」
華煌は三人を連れて共用の間に入った。
座卓や円座、背の低い屏風などが用意され、一角には売店スペースまで設けてあった。
「こればかりはね。峻妙様に押し切られて。茶だの茶菓子だの、企画部が考えたものを置かせろと。」
そこだけは、企画部の烏天狗たちが管理運営することになるらしい。
既に数人の烏天狗たちが準備に入っていた。
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