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共用スペースの次に、華煌は三人を猿専用の間に案内した。
こちらは、ずっと狭い。
障子戸を開ければ、最初に大将が召喚されて華煌と会うときに使っていた岩山がそこにあった。
陽態の猿山に似せた作りで、それよりは一回り小さい。
これも、大将たち猿のこちら側でのストレス軽減のために、華煌がわざわざ配置させたのだろう。
「天狗専用の部屋は、共用の間を挟んで反対側にある。天狗と顔を合わせたくなかったらこちらにいればいい。もっとも、ここは元々君たちのために建てたようなものだから、堂々と広い共用の広間を使えばいいよ。君たちと一緒にいたくなければ、天狗の方が小さくなっていればいいのさ。」
「旦那、そいつはまずいだろうよ。旦那は大天狗、天狗の大将がたのお一人だ。自分のお仲間を優先しないと。」
そんな御方が天狗の味方をしないとと大将が窘める。
自分たち猿を陰態に呼び寄せる本当の意図も、こんな立派なお休み処を建てる理由も、どうも今一つはっきりしない。
華煌が本音を言わないせいだというのは、当然のことながら大将も気づいている。
華煌は、真意をなかなか表に出さない。
人を食ったような態度で、周囲をけむに巻いては笑っている。
その態度では、他の大天狗たちに受けも悪かろうと、大将は心配になるし、心底信頼しきれない心持にもなってしまうのだ。
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