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「気遣いありがとう、大将。ま、何とかなるさ。新しいことや変化には、それなりの痛みが伴うのが定説だろう?」
気にしない気にしないと、華煌は軽く手を振ってみせた。
大将たち猿を伴ってお休み処を訪れてから数日後。
戸隠山より大天狗が10名、ここ陰態の高尾山にやってきた。
彼らもまた、この陰態では人型である。
移動してきたので羽は出しているが、別段大きく長い鼻をしているわけでも、ぎょろりとした眼(まなこ)が特徴的な異形の風体でもない。
10名は皆筋骨隆々、修行でさらに鍛え上げたかのように見える体格をしていた。
「すげえ・・・」
華煌の隣の吉津太郎は目を輝かせた。
「どんな修行をしているんだ。ぜひともお伺いせねば。」
「吉津太郎よ。みてくれで鍛錬の成果を推し量るのはよしとけ。それより黙らぬと智多勝様に叱られるぞ。」
小声で華煌が注意をする。
彼らより前に並んでいる智多勝が、二人にちらりと視線を走らせた。
普段から腹の底を見せない智多勝の視線は、なかなかに鋭く冷たい。
華煌は何事もなかったなのようにけろりとした顔をして押し黙り、吉津太郎は汗を飛ばした。
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