其の四 管狐(くだぎつね)騒動

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「なあ、華煌。ここは一つ、新しい薬草茶と茶菓子をお出しするというのは。」 彼らの反応に、峻妙がひらめいたとばかりに振り返る。 「いや、それ、私に相談しないでください。阿南子様に聞いてくださいよ。」 華煌が困ったように小声で返すと、またしても智多勝が振り向いて睨んできた。 人事部の部長である智多勝にとって、華煌や峻妙は同じ大天狗八人衆であっても要注意人物としてマークしている仲間のかもしれない。 人事部のみの裁量で企画部や福利厚生部から一方的に異動させられることはないかもしれないが、規模縮小を計俊坊と共に謀るくらいのことはしそうである。 財務管理部の計俊坊は、無駄なことにこのお山の資材や資源を使いたくないので、事と次第によっては智多勝と手を結びかねないと華煌は思っている。 もちろん、それが怖いというわけではなく、ほんの少しばかり厄介だなと感じる程度だったが。 薬皇院に到着すると、阿南子は10名を飯綱大権現のおわす奥の間へ案内することになっていた。 華煌たち残りの大天狗たちは、自分の部署に戻ることになっている。 そうして、飯綱大権現に目通りをした彼ら戸隠の10名を、阿南子がそれぞれの部署に連れてくることになっているのだ。
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