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「では。」
真っ先に法羅光坊が一礼し、彼らの列から抜けた。
言葉も他の大天狗たちとの交流も、彼がもっとも少ない。
少ないが、有能で優秀であるということは、大天狗たちの知るところである。
法羅光坊が抜けたことで、他の大天狗たちも各々の部署に戻る。
「緊張するなー。他のお山の天狗に仕事の説明かあ。」
吉津太郎が胸を抑えて溜め息をつくので、華煌の目が面白そうに細められた。
修行や自分で動いて仕事をすることであれば、吉津太郎は喜んで行う。
だが、誰かに説明をするということを、あまりしたことがない。
しかも、相手は他のお山の大天狗たちだ。
上手く出来ずに飯綱大権現の名に泥を塗るようなことになってはと思うと、気も重くなるのだろう。
「あまり気にするなよ、吉津太郎。おまえのところで失敗してくれれば、他の部署は気が楽になる。」
「なんだと!おまえ、俺に失敗しろというのか!」
「失敗しろとは言わんが、笑いを取ってくれてもいいぞ。なぁに、おまえの部署より俺の部署の方がよほど問題にされるだろうよ。」
「へ?そ、そうなのか?」
自分のところより、華煌の方が大変――そう言われて、吉津太郎はきょとんとした。
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