管狐(くだぎつね)騒動

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大将は、しばらくううむと唸っていたが、やがて「お恐れながら」と顔を上げた。 「もし、お許しいただけますれば。」 「許そう。」 「そこの華煌の旦那を一発殴らせていただけませんでしょうか。」 「はあ?」 大将の発言に、言われた華煌も聞いていた大天狗たちからも、驚きの声が上がった。 「ほう。それは何故だろう。」 聞き返す大権現の声が、笑いを堪えるのに精一杯であるかのように震えている。 「華煌の旦那は、ご自分が管狐を阿南子様にお渡しになればよろしいものを、我らを皆様方の前に引き出し、しかもそれを事前に教えでくださらない。こちらの世界に来られるようにしてくださった恩はあれど、こちらも猿どもを統べる立場、共に皆様方の御前に控えております残りの二人を守る責任がございます。それをだまし討ちのような形で危険に晒されましたので、こちらの腹立ちがいかばかりかお察し願えれば。」 大将の言い分に、華煌の顔に焦りの色が浮かんだ。 「え、怒ってるの、大将。いや、だって君たちが気軽にこっちに来られるようにしたかったし、やっぱり管狐を捕らえた功労を俺が独り占めするのはよくないし。」 「こちらに連れてこられたときの俺らの心情は、刑場に引き立てられていく罪人そのものだったぜ、旦那。」 「ざ、罪人って、大将たちは手柄を立てたんだからさあ!」 大将のどすのきいた声に慌てる華煌。
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