コンビニで女を拾う

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コンビニで女を拾う

『ない』と認識するまでは、さほど欲してないはずだった。 自宅近くのコンビニまで車を走らせてー思うぐらいには、まだ猶予は残っていた。 けれど、助手席に無造作に脱ぎ捨てた上着、ワイシャツ、ズボンのポケット、更には車内をひと通り探り『ない現実』が確定した瞬間、異様なほどの渇きを覚え始める。 軽い舌打ちが、静かな車内に響く。 自分の欲求が満たされるまで頭の中からそれを排除する事は、これで完全に不可能になってしまった。 幸いな事に現在車を走らせているのは、国道。 ほどなく道路沿いに、煌々と光るコンビニを発見した。 結局あと十分の自宅まで我慢が出来ず、なんの迷いもなく駐車場へと車を滑らせた。 脇目も振らずにレジに一直線し、お目当てのものを無事購入する。 「禁煙しろっつったって、なあ…」 車に戻る最中。 包みを開けながら、ふと漏らす。 「一生無理だな」 箱から取り出した一本を咥えつつ、あっさりと彼は白旗を上げた。
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