京一 *雨男の憂鬱

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「あぁっ……イイッ……もっと突いて……」  声がデカすぎる女は演技っぽくて白ける。  反応が薄くても萎える。  世の中には何事にもちょうどいい加減というものがある。  今日の女は見た目は好みだったけど、事に及んだらイマイチだった。  もう少し遊び慣れた女なのかと思って期待したが、Mっ気の強すぎる女は 「もっともっと」と要求するばかりで、サービス精神というものがまるでない。  初っ端から、男なんてアレを舐めたら気持ちいいんでしょって態度が気に食わなかった。  第一印象は案外裏切らない。  中折れしそうなのを持ち堪えるのに必死で、終わった瞬間にホッとした。 「うふふ。すごくよかった」 「そう。そりゃよかった」  女は満足そうに俺に抱きついてきたが、その腕をしれっと振り解き、バスルームへ向かった。  よかったと言われて悪い気はしないが、こっちはそうでもなかったよと言いたい気分だった。  自分が満たされることしか考えない女は、セックス以外の場面でも自己中心的なことが多い。 「え、もう帰るの?」  バスルームを出て、帰り支度を始めた俺に女が言った。 「ああ、うん。明日早いし」 「そう言えば、まだ名前も連絡先も聞いてなかったよね?」 「一晩だけなんだし要らないでしょ、そんなの。じゃあ」   待ってと騒いでいる女を残し、ホテルの部屋を出た。  バックが好きだという女の名前も聞かなかった。
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