麻子 *四十歳はおばさんですか?

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 浴槽に体を沈めて目を閉じると、雨男さんとのキスが遠慮なく甦ってきた。  あのまま、Tシャツの中に入ってきた彼の手を止めなかったら、どうなっていたのだろう。  今夜とは違うストーリーが頭の中に妄想として浮かんでくる。  手が自然と胸を包んでいた。  彼はどんな風に触れるつもりだったのだろう。  想像すると体の奥がキュッとなって、手が下腹部へと伸びた。 「はぁ……」  ヒトリでしてしまいそうになった時、玄関の鍵を開ける音がした。どうやら娘が帰って来たらしい。  そこで我に返った。  あたしったら、一体何を考えているのだろう。  夫以外の男性に抱かれることを想像しながら、ヒトリでしようだなんて……。  相手は今日あったばかりの、名前も知らない人なのに。  夢のような時間は当然夢で、きっともう二度と彼に会うことはないのだろう。  もう会ってはいけないし、会いたいと思うことすら罪だ。  そう思えば思うほど、不思議と会いたい気持ちが募っていった。  どうせもう会えないのなら、最後までしてもらえばよかったかな。  あんなイケメンに相手してもらえることなんて、もうないだろうから。  目の前で鼾をかいている男がひどく間抜けに見えた。
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