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浴槽に体を沈めて目を閉じると、雨男さんとのキスが遠慮なく甦ってきた。
あのまま、Tシャツの中に入ってきた彼の手を止めなかったら、どうなっていたのだろう。
今夜とは違うストーリーが頭の中に妄想として浮かんでくる。
手が自然と胸を包んでいた。
彼はどんな風に触れるつもりだったのだろう。
想像すると体の奥がキュッとなって、手が下腹部へと伸びた。
「はぁ……」
ヒトリでしてしまいそうになった時、玄関の鍵を開ける音がした。どうやら娘が帰って来たらしい。
そこで我に返った。
あたしったら、一体何を考えているのだろう。
夫以外の男性に抱かれることを想像しながら、ヒトリでしようだなんて……。
相手は今日あったばかりの、名前も知らない人なのに。
夢のような時間は当然夢で、きっともう二度と彼に会うことはないのだろう。
もう会ってはいけないし、会いたいと思うことすら罪だ。
そう思えば思うほど、不思議と会いたい気持ちが募っていった。
どうせもう会えないのなら、最後までしてもらえばよかったかな。
あんなイケメンに相手してもらえることなんて、もうないだろうから。
目の前で鼾をかいている男がひどく間抜けに見えた。
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