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---王室観客席
「ブルーノ王!早くこちらへ!」
衛兵らしきエルフが扉を開けるとブルーノを出口に促す。王は椅子から立ち上がると煙の奥に見えるサラマンドラを確認し、眉間に皺を寄せた。
「民衆を先に先導しろ。リサは怪我を負った者の介護を。城内の守護者にも事態を報告しろ」
ブルーノは側近に指示をすると風の加護の光を放つ。その光は会場全体を風で包み、サラマンドラの炎を天に舞い上げる。ブルーノの姿を見ていたリサは、王と呼ばれる者の加護を目の前にして体が震えるのを感じていた。リサはブルーノの指示通りに怪我をした者の介護の為に石の階段を駆け下りる。
「これが愛された者の力」
リサが会場に降りたとき目の前は煙と荒れた石畳が目の前に広がっていた。燃えた芝生の煙が紅く染まっている。彼女は城内のエルフを見つけると、傷ついた者を連れてくるように指示をした。彼女が近くの怪我人に風の加護を当てると傷口がふさがっていく。リサは傷を治すと他の怪我人を探す。見回すと緑色の光が会場全体を包んでいるのがわかる。その光景を見て心を落ち着けた。安心感というのはこういうことを云うのかと思った。
風の壁の向こう側でサラマンドラが吠え、炎を吐いているのが見える。リサはその近くに人影があるのを感じると呼吸を整え歩みを進めた。
「羽なしハーピー?」
リサの歩みが早くなる。風の壁に近づくと空気の温度が上がる。熱風が彼女の髪を揺らした。リサが確認した人影の近くまで歩み寄ると二人であることがわかった。二人の影はサラマンドラに背を向けず、まるでこれからサラマンドラを狩るかのように佇んでいる。大会で疲れ切ったはずの選手がなぜ残っているのか彼女には理解できなかった。
ここは私達に任せて逃げなさい。そんな言葉も二人には聞こえないようだった。リサは眉を潜めさらに二人に近づく。羽なしハーピーが矢を手に取るのが見えた。リサはハーピーが加護無しだということを直感的に感じていた。加護無しに何ができるのかと、心配と苛立ちがリサを早足にさせる。加護が無ければ間違いなく王の作り出した加護の壁を射抜く事などできない。走りながらリサは声を出す。
「逃げなさい!」
リサの声はサラマンドラの咆哮にかき消された。ケイトが弓を引くのが見えた。
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