本編

8/12
前へ
/12ページ
次へ
 ふと考えた。坂本さんにとって私はどういった存在に位置しているのだろう。もしも私が地球人ではないことを既に認知していて、悟られまいと空回りしている私を掌の上で眺めてほくそ笑んでいるだけなのか。痺れを切らせて自白する瞬間を待ち構えているだけなのかもしれない。  もしそれが真であれば、それはそれでお互いの為になるのだろうか。坂本さんは懐からクラッカーでも取り出して祝ってくれるのか。いずれにせよ、これまでと同じ関係が続くことを願うばかりだ。両膝を支える手に自然と力がこもった。 「名案だよ。その判断はとてもロマンティックだ」 「ロマンティックを秤にかけるなんて、お前らしくもないな」 「坂本さんの影響だよ、きっと」  私は窓際に移動し、月を眺めるかぐや姫さながらの風情で冬の空浮かぶ欠けた寒月を視界のフィルムの中心に据えた。周囲を流れる雲が光に当てられて僅かに形を理解することができた。  私はさながら、私の制作指揮を務める映像の中心人物としてその舞台に映っていて、訪れるエンディングを待っている。その他で、謎の液体に満たされた試験管に私が落とされ、一挙一動を監視する視線がガラスの外で感じたりもした。第三者の指と目を感じて、客観視する機会を目の当たりにすることなく、これが正解だと信じたものを振る舞う。人らしくいるとは、そういう事でもあるのだろうか。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加