『さよなら』が言えなくて

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『さよなら』が言えなくて

「あっ」  卒業式の朝、学校へ向かう道。いつもの人影を見つけた。 「なんだ、最終日も一緒か」  その人影、同じ高校の制服を着た男子は表情で「面倒くさい」と言っている。 「何よ、嫌なら知之(ともゆき)が違う道使えばいいじゃない」  私は声に出してその表情に反論する。  幼馴染の知之とはいつもこの道で出会う。別に待ち合わせとか、そんなのじゃないのに不思議と出会ってしまう小学生からの腐れ縁だ。 「麻理菜(まりな)の方こそ」  やれやれ、といった感じで知之が答える。  そして何だかんだいって、一緒に学校に向かうのが日常だった。  今日までは。  今日は卒業式。  卒業後、私は東京の大学に行くため、この町を出ていく。  知之と会うのは今日が恐らく最後。  だから、ちゃんと『さよなら』を言わないと。  言わないと、きっと後悔してしまうから。
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