私の恋を手にするときは

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 駐車場に出て、春奈さんを見送る。敷地を出る直前に、春奈さんは私に向かって会釈をしてくれた。私は大きく頭を下げる。顔を上げたとき、運転席の窓越しに見えた横顔の、鼻先から顎へと結ばれる完璧なEラインは、凌一と同じだ。  車が完全に見えなくなってから、ブライダルルームに戻った。美容室本体は二階で、ピロティタイプの駐車場のすぐ横に、独立してブライダルルームがある。中に入ると、すうっと汗が引いていった。八月はちょっと外に出ただけで汗をかく。部屋を片付け、壁にかかっている時計を見上げると、十二時少し前。あと二時間で、岬さんがやってくる。
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